★ついったで呟いたネタログ2:いつかサルベージできたらいいな! 【2011.07.24@幼少時代捏造】 「どうした」 「…とーさま、が、」 「はぐれたのか」 夕餉の香り漂う夕暮れの小道。幼い少女が泣いていた。 「すぐに帰ってくるって、いってた、のにっ」 「それなら、もう少し待っていればきっと帰ってくる」 言った一の顔を見上げた少女の瞳が夕焼けにきらりと光った。西からゆるく吹く風にからからと音がする。姉からもらった風車を手に握っていたことを思い出した。 からから。くるくる。 「これをやるから泣き止め」 一の差しだした風車を小さな手がそっと握った。何も言わずに少女の隣に座ると、こどもは嬉しそうに風車を左右に振ってまわし始めた。 ひぐらしの声が降る夏の宵の口のこと。 しばらくして、剃髪の男性が遠目に手を振りながらかけてくるのに気づくと、少女はぱっと立ち上がって駆けだした。小さな背中が父親の腕の中に収まったのを確認して、一もまた家路につくのだった。 【2011.06.13@行軍中】 「こちらへ来い」 羅刹となった斎藤の身を慮り、夜の間に先へ進もうとする千鶴を制し、己の傍らに呼び寄せる。 「少しでも休め」 女の身には過酷な山道。しばしの逡巡を見せてから近寄ってきた千鶴を隣に座らせると、その細い肩を抱き寄せた。びくりと強張ったのは一瞬。身を預けてきた千鶴は「斎藤さんもちゃんとお休みになってくださいね」と囁くように告げると、そのまま目蓋をとろとろと落としていった。木の狭間から零れ落ちる月影にほんのりと浮かび上がる真っ白な頬。肩口から漏れる寝息に乱れそうになる心臓を宥めながら、眠る千鶴から視線を逸らした。 【2011.06.05@現パロ プロポーズの日らしいよ!!】 「誕生日おめでとう、千鶴」 「一さん…」 「その、これは、お前へのプレゼントなのだが…」 微妙に視線をそらしながら差し出されたのは掌に乗るサイズの小さな箱。 「あの、開けても?」 「、あ、ああ」 ひっこめた手を所在無げに開いては閉じる一さんに首を傾げながらラッピングを解いた。 「…これって」 「…その、何をプレゼントすれば良いのか色々考えたのだが…結局、俺がお前にやれる最良のものといえば、これしか思いつかなかったのだ。…千鶴、俺の生涯を受け取ってはくれないだろうか」 鈍く光る銀色の輪が小箱の中で光っていた。やや不安げに私の返答を待つ一さんの手に、私は小箱を返した。 「…ッ、」 息を呑み、顔を歪めた一さんは、しかし即座に平静さを取り繕い、「すまない」とこぼした。 「一さん、ちゃんと一さんの手でここに嵌めてください」 何も装飾品をしていない左手をそっと差し出し、右手でその薬指に触れた。 「私の人生も、あなたのものにしてください」 「、ちづ…る」 迷うように、壊れ物に触れるように。やさしく触れてきた私のものよりも骨ばった大きな手が、そっとゆっくりと左手の薬指に白銀の指輪を通してゆく。瞬きさえ忘れてその様を見ていたのは何秒だったのか。最後までリングが嵌められると、彼の手が離れてゆく。代わりに、背中に腕を回された。 「俺の生涯をお前に捧げよう」 「私も捧げます――はじめさん」 【2011.05.30@屯所時代 沖田さんの命日なのに斎千←沖ごめんさい!】 「千鶴ちゃん」 「沖田さん?」 いつもからかっているせいか、僕が名前を呼んで近づくだけで彼女は身構える。 「何?道場なんか来て、見取り稽古?」 「あ…えと…」 道場の入口に立つ彼女はしどろもどろに目を泳がせた。 「…居合の見取り稽古かな」 ぼそ、と呟いた僕の声を拾ったらしい彼女はたちまち耳まで赤く染めて俯いてしまう。今、道場で刀を振るっているのは一番組と三番組。その中で居合を得意とするのは一人。一くんだ。隠しているつもりなのかもしれないが、彼女の視線はただひたすらに黒衣の男を追っている。言われなくてもわかってしまうことが少し悔しいけれど、見ていればわかること。 「居合は初心者が真似するのは難しいんじゃないかな。…どうせなら僕が君の身の丈に合った剣術を指南してあげようか?」 「え…?あの…」 見取り稽古でないなんて知っているけれど、あえて無視して話を進めれば明らかに困惑しているのがわかる。手を取って道場に引き入れようとしたそのとき。 「総司」 今一番聞きたくない人間の声が横やりを入れてきた。 「…なぁに、一くん」 「あんたの稽古は荒い。雪村をからかって遊ぶのはやめろ」 「斎藤さん…!」 隣に立った一くんに、千鶴ちゃんは明らかに安堵した様子でその着物の袂を掴む。絶対の信頼を隠さないその琥珀の瞳に苛立ちが募る。知っている。独りよがりなのは僕だ。わかっていて、それでも諦められない往生際の悪さは以前は知らなかったもので。――どうせなら知りたくなんてなかった。 【2011.05.28@現パロ 体操着はTHE萌えアイテム^^】 「終わりました!」 係として授業で使った体操器具を片付け、倉庫に鍵をした千鶴は一のもとへ駆け寄った。クラスメートは皆教室へ戻り、広い運動場には一と千鶴だけ。千鶴の頭にポンポンと撫でるように触れた一は、教室へ戻ろうとする千鶴の腕をとって引き留めた。半袖の短い体操着から覗く白い腕は、汗でほんのり湿って肌が吸い付く。 「一さん…?」 振り返る千鶴の身体を腕に囲い込み、ゆるりと自分の影を落とす。甘い吐息が触れそうになったその刹那。僅かに千鶴が俯き、一の唇はその鼻先に触れるにとどまった。 「…教室から見えちゃいます…」 【2011.05.18@現パロ】 「…千鶴、風邪か」 ケホケホと咳をする千鶴に、斎藤はポケットから飴を取り出した。空調の関係で喉が乾燥しやすいため持ち歩いていた最後の一つだ。包みを開き、指先に摘まんだ飴玉を千鶴の唇に触れさせると、閉ざされていた淡い桃が開く。 「ん…酸っぱい、です…」 口の中で飴を転がしながら斎藤を上目に見上げる千鶴に、斎藤はこくりと唾を飲み下した。 「ならば…」 唇に這わした指先をそのまま頬にずらす。そしてそのまま距離を詰めると、檸檬の香りの吐息を封じ込めた。 「…これでもまだ酸っぱかったか?」 「っ、あま…いです…」 【2011.05.13@現パロ ネクタイを片手で緩める動作萌え!】 彼は普段服装の乱れを見せたことはない。だから、渡された合鍵を使ってひとり彼の帰りを待っていたこの日、初めて見たのだ。仕事から戻った彼の節ばった手が慣れた仕草でネクタイをゆるめ、続いて襟元を覆っていたボタンをふたつ外す。受け取った上着をハンガーにかけるのも忘れて見入っていた。 「…千鶴」 動かない私に気づいた彼が訝しげにこちらを見る。露になった喉仏が小さく動いた。 (さわり、たい) 無意識に手を伸ばし、緩く隆起するそこを唇でなぞった。 「……ちづ、る…?」 今度は戸惑いをあらわにした声が降ってくる。 「もっと…、もっと呼んでください」 彼の身体を震わせる私の名前に酔っていた。 【2011.03.24@大正浪漫斎千の出逢い】 会津から帝大受験の準備のために上京し、下宿先に荷物を置いた斎藤は、宵闇の中誘われるように外へ出た。季節は3月だが、今宵は春の暖かさだ。何もかもが新鮮な東京の町で、耳に届いた川のせせらぎを辿ると、ふと密やかな香りが鼻腔を掠めた。くゆる高貴な香りは梅のもの。気づけば、春告花の通い路を追っていた。ゆっくりと増す香気を辿った先には、立派な梅の木とそれを見上げる女の姿があった。先客の存在に斎藤がためらっていると、ゆるりと振り返った女の長い髪が風に吹かれて頬を撫でる。それを押さえる右手と、斎藤に向き直ったかんばせの白さに目を奪われた。 「良い香りですよね」 鈴を鳴らすような声。返事をできずにいると、女は構わず続けた。 「梅の香りが遠くまで届いていたから、思わず香りを辿って来てしまったんです」 「……俺も、だ」 「そうなんですか…一緒ですね」 口許に手を添えて微笑むその姿は、宵闇に一輪咲く梅に似ていると思った。 このあと梅に向き直ったちづたんの横顔を盗み見ちゃう斎藤さん→先に帰ろうとするちづたんを送り届けると申し出る→先程の下宿先の娘だと判明→ひとつ屋根の下生活開始すれば良い\(^O^)/ 【2011.03.23@屯所時代 格好良い斎藤さんに飢えてるよ】 「雪村、下がれ」 右手は鯉口にかけた状態で半ば強引に腕を引き、己の背後に千鶴を庇う。緩く腰を落とした斎藤は射抜くような苛烈さを眼差しに滲ませて敵をねめつける。滅多に感情を見せない斎藤が、敵を前に冷徹な光を藍にのせる様は千鶴からは見えない。しかし、青白く燃えるような闘気をその背中に見た気がした。 (この背中に何度守られてきただろう) 千鶴の手から離れた彼の左手は油断なく柄に添えられている。間合いを測っている敵が動に移ったその一瞬を鮮やかに切り裂くであろう一閃が目に見えるようだ。どんな時も美しさを損なわぬその太刀筋は朱を受けてなお光を失わない。 【2011.03.12@ED後】 「一さん、目を閉じてください」 千鶴の言葉に目を閉じる。一の手を包むように握り、前に座った千鶴はゆっくりと語りだす。 「こんな日はよく皆さんで集まって宴会をされてましたよね。原田さんが腹踊りをされて、永倉さんと平助くんが囃し立てて。土方さんは呆れたみたいに眺めて。沖田さんはちびちびお酒を飲みながらたまに土方さんや一さんをからかって。私はそれをハラハラしながら見ていました。ハラハラするけど、そんな皆さんと過ごす時間が大好きでした。…見えますか?」 一は目蓋の裏に千鶴の語る光景を思い浮かべた。もはや遠い記憶。屯所で過ごした日々は、決して安穏とした日常ばかりだったわけではないが、心に残るそれは暖かなぬくもりに満ちている。 「こうして目を閉じれば、ちゃんと皆さんは今でも一さんの――私たちの傍にいてくれます。見えなくても、大丈夫です」 千鶴の語る声は澱みなく、包まれた手から伝わる暖かさはかつての京で感じた日常を思い起こさせる。先の見えない生活への不安は千鶴も同じはずなのに、それがゆっくりととけていく。 「…もう、大丈夫だ」 ゆっくりと目を開けた一の視界には、陽だまりの暖かさで微笑む千鶴がいる。包まれた手を引き、そのまま千鶴の身体を自分に引き寄せると、再び視界を閉ざした。唇に感じる柔らかさ、鼻腔を満たす香り。今の一にとっての「日常」をただ抱きしめて。 【2011.03.09@主従パロ】 「私の嫁ぎ先が決まりました」 「そう、ですか…」 「嫁ぐといっても形ばかり。同じ城に住むこともありません」 「…」 「今まで仕えてくれてありがとうございました。…、」 それ以上口を開けば要らぬ言葉を吐いてしまいそうだった。物心つく前から常に傍にあった、千鶴の最愛の影。 【2011.03.03@羽衣伝説パロ 天女ちづたんとの出会い】 キラキラと陽光を反射して輝く水面。はらはらと舞い落ちては浮き船となる薄桃の花弁。のどかな春の湖で水浴びをする女が目に入った。目に眩しい白い背中がゆるやかな曲線を描き、水滴が流れ落ちてゆく。まるで一枚の絵画のような光景に、男は目を外せなくなった。あまつ乙女とはこのことだったのか。 【2011.02.26@屯所時代 縁側お茶飲み斎千を愛で隊!】 夕暮れの風は少しばかり冷たい。しかし、斎藤は千鶴の隣に座り時の流れを共有するこの時間が好きだった。 「斎藤さん、お茶をどうぞ」 差し出された茶は、千鶴が手ずから淹れたもの。ほどよい熱さで湯気をたてるそれに口をつけると凝り固まった何かが解れる気がした。湯飲み越しに伝わる温度がじわりと手をぬくめてゆく。熱すぎず冷たすぎず。決して無理に入り込んでくるような無粋さのないそれは、拳ひとつ分だけ間をあけて茶を啜る彼女に似ていた。じわじわと斎藤の日常を侵食し、あたたかなもので満たしてゆくその存在。――もはや手放せそうになかった。 【2011.02.24@ED後 にゃんにゃんの日に便乗しようとした、よ!】 肌蹴た背中に触れるのは、千鶴の身体をやんわりと受け止めた夜具。自分を押し倒した一の身体が目前に迫り、千鶴は恥ずかしさに目を閉ざした。ゆるゆると宥めるように髪に触れる一に、千鶴は恐る恐る目を開ける。愛おしげに見つめてくる藍色に自分が映っていた。 「千鶴…」 もっと近くで見たくてその顔に手を伸ばした。手に触れる暖かさをもっと感じたくて、そのまま一の背に腕を回すと、ぎゅっと引き寄せてその頬に触れるだけの口づけをした。 |