あけましてはじめさんおめでとうございます


2011年、明けました!
はじめましての方もいつもいらして下さっている方も、明けましておめでとうございます。管理人の秋穂です。
本日、2011年1月1日は、はじめさんのお誕生日であり、斎千の年(うさぎ年)のはじめの日でもあります。
アニメは終わってしまいましたが、まだまだまだまだ斎千は熱いっ!!
今年もサイト運営はもちろん、オンリーイベント(記念)参加など、より一層斎千を愛でていけたらと思っておりますので、よろしければお付き合い下さると嬉しいです^^
2011年が斎千とさいちづらーの皆さまにとって幸多き年となりますように。

2011年元旦 秋穂もゆ@TSUYU


*   *   *


「一さん!雪ですよ!!」
 底冷えする朝、床から起き出した千鶴が開け放った戸からは一面の雪景色が広がっている。
 極寒の土地である斗南において、積雪など全く珍しくはない。しかし、時は初日の出の曙光が大地を照らす頃合い。黄金(こがね)の光が真白の大地をきらきらと輝かせていた。
 分厚い羽織を肩にかけ、一が外に出る。続いて、千鶴が後を追う。
 目に見えてわかる速さで太陽が姿を現していくのを、ふたりはしばしの間息を呑んで眺めていた。
 日が昇りきり、その余韻を味わう間を置いてから、千鶴はそっと一の背後へ回った。軽く背伸びをして、後ろ手に持っていたものを夫の襟元へ巻きつける。
 一が振り返るよりも先に、彼の正面へ回り込むと、満面の笑顔で告げた。
「一さん、お誕生日おめでとうございます!」
 目を丸くした一は、千鶴と、それから己の襟元を交互に見つめる。彼の首元には、鮮やかな紺瑠璃の襟巻が覚えのある形で巻かれていた。その色は、丁度一が腰に巻いているものと同じ色。
「これは……」
「襟巻をされなくなってから随分経ちますけど…やっぱり一さんといえば襟巻かなって。その色合いでしたら、洋装のとき腰に巻いてらっしゃるものと同じですし、普段のお着物にも合うと思ったんです。昔のものは私がいただいてしまったので、代わりというのもなんですけど、受け取っていただけますか?」
「…ありがとう。やはり、襟巻があると落ち着くな」
「昔からずっと身に着けてらっしゃったんですよね」
「そうだな…。気付いたころには既に巻いていた気がする」

 それから、千鶴は訥々と昔語りを始めた夫の話に耳を傾けた。これまで多くを語ることのなかった一の話は過去から徐々に時を下り、千鶴と過ごした時間へ。
「雪の積もった日には千鶴が雪うさぎを教えてくれた」
「覚えててくださったんですね…。あの日もこんな風に雪がきれいでした」
「寒さを気にもかけずに外へ出て」
「はい。そして、こうやって…雪うさぎを作りました」
 その場にしゃがみ込んだ千鶴が雪を掻き集め、あっという間にうさぎの身体を作り上げた。近くから南天の実と葉を取ってきて、それをくっつければ雪うさぎが完成する。
 小さい体に愛嬌のあるつぶらな赤い目。簡単な造形には、作る者の個性が出てしまうものだ。
「……千鶴に似ているな」
「そう…ですか?」
「ああ」
 目をやんわりと細めた斎藤は、慈しむように千鶴の手にある雪うさぎの背を一撫でした。

「――淋しいとうさぎは死んじゃうんだそうです」
 千鶴は自分の作った雪うさぎを見て呟く。
 その手にあるのは、うさぎを象った雪の塊であって、本物のうさぎではない。しかし、赤い瞳で見上げてくるそれは、既にただの雪でないことは確かだった。
 一はおもむろにしゃがみ込むと、降り積もった雪を掻き集めて雪うさぎの形にする。南天の実と葉をつければ、雪は息を吹き込まれる。少しばかり大きめの体に、小ぶりの瞳がどこか凛々しく宙を見据えていた。
 一の手によってそっと隣り合わせに置かれた雪うさぎたちは、どこか作り手の夫婦に似た様子で寄り添い合う。
「…これで淋しくないだろう」
 笑みを浮かべて千鶴を見た一は、冷たくなった手で同じく冷えてしまっている妻の手を取った。
「こちらの淋しがりなうさぎには俺がついている」
 絡めあった手を引くと、千鶴の身体は一の胸の中にまろぶように寄りかかった。取り合った手に息を吐きかけて温める。
「私ばかり喜ばせてもらってる気がします…。今日は一さんのお誕生日なのに」
「千鶴はこの襟巻をくれたではないか。…それに、俺の望みは単純だ」
 寄り添う妻に、一は己の首元を温めている布を半分わけて巻きつけた。向かい合う二人を、長い紺瑠璃が繋いでいる。
「――今年も、俺と共にあって欲しい。千鶴」
 吐息の触れる至近距離。寒さだけではなく頬を薄紅に染めた千鶴は、そっと目を伏せてから夫の顔を見上げた。そのまま、背伸びをして唇を触れ合わせる。
「今年も、来年も――ずっとずっと、命ある限り一さんのお傍においてください」
 淋しさなど、ふたりでいれば忘れてしまうから――。

 その後(蛇足)