※千鶴・斎藤・沖田がクラスメイトな高校生パラレル 症状:動悸・息切れ・微熱 (どうすればいいのだ!) 場所は高校の保健室。時は体育の時間。 斎藤一は困っていた。彼は、自慢ではないが運動神経には自信があった。 日常的に体力作りのため、早朝のランニングは欠かさないし、朝食をしっかり摂った後は部活の朝練。昼もしっかり食べて勉学に打ち込み、放課後も部活。申し分ない学生生活を送っていることを自覚している。それゆえ、今現在の状況は不覚としか言いようがなかった。 そんな彼は今、クラスメイトかつ保健委員である雪村千鶴と保健室に二人きりという状況にあった。 どうしてこうなったのか。 遡ること15分ほど前、体育の授業で体育祭のための出場種目を決め、クラス対抗リレーの選手として選ばれた斎藤、雪村千鶴、沖田総司他2名はリレーの練習ということで実際に走ってみようということになった。 クラス対抗リレーは、その名の通り、各クラス5名の精鋭による血と涙と威信をかけた青春の闘い(体育教師・永倉新八の言葉を借りた)なのである。 クラスの期待を一身に背負ったこの一戦、決して負けられぬと気合いも入るというものだ。 まずは5人で走る順番を決め、沖田が第二走者、千鶴が第四走者、アンカーが斎藤というところまでは問題なかった。 練習にトラックを一周走り、順にバトンを受け渡していく。 二番目に走った沖田は、スタート地点に移動した千鶴を横目に見たあと、斎藤に向かってにんまりと笑った。 「一くん、千鶴ちゃんの前で格好悪いところ見せないようにせいぜい頑張りなよ?」 「なにゆえそこで千鶴なのだ。これはクラスの威信をかけた闘いであって「んー、細かいことは良いからさ!…っと、千鶴ちゃんが走り出したね。一くん、スタート地点に行って準備しなきゃ」 あっけなく斎藤から離れた沖田は「千鶴ちゃん頑張れー!」とトラックを駆ける千鶴に声援を送っている。釈然としないものを感じながらも、斎藤はスタート地点へ移動した。 千鶴が走ってくるのに合わせ、手を後ろに差し出し、リードをとりながら走りかける。 「斎藤さん…!お願いしますっ!!!」 掛け声とともにバトンを受け取り、斎藤は駆けだした。風を切る音。遠く声援。地を蹴る足は自在に動く。 絶好調だった。 しかし。 「は、はじめさん!!頑張ってください!!」 (……な…に…?) よく知った声。先程も「お願いします」とバトンを渡し微笑んでくれた心強いチームメイト。その彼女の声が、今、なんと言った? ――はじめさん、とは言わなかったか。 無意識にトラックの内側に視線が移り、恥ずかしげな表情で手を振る彼女とイイ笑顔を浮かべた沖田が視界に入った。 聞き間違いではない。そう思った瞬間、かくん、と。 かくん、と膝の力が抜けた。ゴールは目前。風切り音はもう聞こえない。 「――――っ!!」 かくして、ゴールを前に、盛大にこけた俺は今、保健委員である彼女に伴われて保健室にいる。膝にできた大きな擦り傷を消毒する千鶴を前に、もう走り終えて随分経っているというのに動悸息切れが止まらない。(普段はトラック一周走った程度で息切れなどしたことがないというのに、だ!) 彼女の白い手が、患部にガーゼを当て、包帯を巻くために足に触れる。その手のあたたかさに眩暈がした。頭が、くらくらする。 これはなんだ、残暑の日差しで熱中症になってしまったのだろうか。 荒い息で考えるもわからない。 「斎藤さん、手当てできましたよ!」 「………」 「…もしかして、熱でもあるんですか!?お顔が赤いです…!!」 額をくっつけてきた彼女を前に、視界は暗転。 「さ、斎藤さん!?しっかりしてください!!斎藤さん…!!」 (さっきの呼び名はなんだったのだ…!!) (2010.09.13初出→2010.10.03再録//rewrite) ラブが書けない病を治すべく、ラブコメ(?)チックにお送りしました☆はじめさん呼びは当然沖田さんの差し金です^^ |menu|
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