「I LOVE YOU」を訳しなさいバトンに発想を得て、ルルーシュの愛について考えてみた。
 ユフィ←スザク←ルルーシュで一方通行です。
 本編最終話までを前提にした暗くて救いのないお話なので苦手な方注意!
 大丈夫な方はスクロールプリーズ!!



























 スザクは俺を憎んでいる。それはなぜか。考えるまでもない、簡単すぎるほど簡単な問いだ。
 ――スザクの大切だったものを、俺が奪ってしまったから。
(そう、大切“だった”。確かに現在形だったはずのものを俺が過去形にした)







I    L O V E    Y O U








 桃色の髪を緩やかに風になびかせる彼女は、血なまぐさい策略と陰謀の渦巻くブリタニア皇家にあって、まさにひだまりのような存在だった。見るものの心を和ませる笑顔にはいつも陰りなど見受けられず、かけられる言葉に偽りはなかった。ただただまっすぐな、そして透明な言葉の数々。一緒にいると、沈んだ気分も風船のように浮き上がっていく。
 ナナリーと同じくらいに、大切だった。ナナリーを大切な気持ちとは、似ているもののどこか違っていることには気づかなかったけれど。血の色に染まってしまったブリタニアの皇子だった頃の自分の記憶。忘れてしまおうともした。彼女のやわらかい桃色は、涙で薄められた血の色に似ているからだ。桃と紅は、近しい。
 あんなにも大切だった彼女の笑顔は、もう、こんなにもとおい。
 なぜなら。彼女は。
 彼女は、俺が恐れた血の色に縁どられた瞳で、似ていても確かに違ったはずの血の色をその桃色にまとって、

 彼女は、
(ユフィは)

 しんだ
(ちがう、おれが、ころした)

 ただ、あの頃は願っていただけなのに。
(ずっと、わらっていて。そうすれば、僕はしあわせだから)




 **




 ゼロ・レクイエムを成し遂げる。それが俺とスザクが交わした契約だった。スザクは、実の父を手にかけたことを悔いている。そして罰を求めた。大義名分のもと与えられる死を夢見てひた走っていたスザクを救ったのは、俺がかつて大切に思っていたひと。ユフィ、だった。俺がブリタニアを壊して、やさしい世界を作り上げればずっとそばにあると思っていたはずのスザクは、軽々と俺のもとを飛び立ち、慈愛の姫のもとに舞い降りた。それでも友人としてはそばに居続けるそのあり方はどこまでもやさしく、そして残酷だった。


 しかし、はつこい、だっただろうひとを手にかけた瞬間、俺は親友をも失った。すべてを忘れた偽りの平和。偽りの友人関係を続けた末、最終的な目的のために交わした契約があるから今、スザクは俺より一歩下がった後ろに立ち続けている。己は「剣」なのだと、スザクは称した。剣に必要なのは、極限までに鍛え抜かれた鋭利な刃だけ。


「ルルーシュ。おまえはもっと、おまえ自身のしあわせを求めても良いんじゃないか」
 共犯者はどこか、母のようなやさしさで告げる。
 俺自身のしあわせ。それはなんだろうか。しばし沈思した末に、思い出したのは幼いころの自分。

(ずっと、わらっていて。そうすれば、僕はしあわせだから)

 そうだ、俺は俺の大切なひとが笑っていてくれれば、しあわせ。

「C.C.」
「なんだ?おまえのしあわせが何か、わかったのか?」
「…俺のしあわせは……わらっていることだ」
「おまえが?」
「俺の大切なひとが」
「…………そうか」
 聞いたC.C.はどこかかなしげに俺を見る。笑顔をやる、と彼女に約束した。それはつまり俺のしあわせにもなるはずだ。
 でも。
「おまえの一番のしあわせが、手に入ると良いな」
 俺の一番のしあわせ。それは、一番大切なひとが笑っていること。一番、大切な。
「私が、祈ってやるよ。祈る神のないおまえの代わりに」

(スザク、)






 ――わらって。
 やさしい共犯者は祈ってくれたけれど、どうしても叶いやしなかった。白の礼装が、ユフィを染めた色に染まっていく。仮面越しに、スザクが呻くように俺の名を呟いたのが聞こえた。

 俺はまた、スザクを苦しめてしまった。
 ただ、わらってほしかっただけ、なのに。
わら…え
 俺の一番のしあわせ。それはもう願えないから。

(どうか、いきて)




『生きろ』
 かつておまえの意思を歪めた俺のギアスは、俺の願いで、俺の あい だった。





(09.03.25//I LOVE YOU ずっとわらっていてください。それが無理ならどうかいきて)