しあわせかぞくけいかく









「何?ルルーシュたちが日本に留学したまま帰りたがらない?」
「そうなの…なんでも、ブリタニアを名乗るのはもうこりごりだとか」
「………」
「…シャルル?」
 しばしの沈黙の末、マリアンヌを見据えたシャルルは決めた、と低く宣言した。
「マリアンヌよ。皇帝位を退いてわしも日本に行く」
「まあ…!」
「息子がブリタニアの名を嫌うならばそれを捨てるまでよ」
「とっても素敵な決断ね、シャルル!惚れ直したわ」
「うむ」




 翌日、政庁にシュナイゼルを呼ぶと、シャルルは厳かに告げた。
「シュナイゼルよ」
「はい」
「わしは本日をもってブリタニア皇帝の位を退く。次期皇帝はお前だ。よろしく頼んだぞ、シュナイゼル」
「どうしてまた急に?」
「うむ。実は、ルルーシュたちが留学先の日本から帰りたがらなくてな。ブリタニアの名も捨てたというからわしも捨てて日本に行くことにした」
「……はぁ」
「そういうわけだからシュナイゼルよ。わしらの日本での生活を脅かすような政治はするでないぞ」
「………はぁ」
 常に冷静沈着なシュナイゼルが半ば呆気にとられていると、勢い良く皇帝の間の扉が開いた。そこには両手に大きな荷物を抱えたマリアンヌの堂々たる姿。
「シャルル!準備が整ったわよ。さ、日本へ発ちましょう!」
「今行く。………ではまたな、シュナイゼル」
 足取りも軽く部屋を出ていくシャルルの背中を追うこともできず、シュナイゼルの延ばしかけた腕は空を掻く。新たなる第99代ブリタニア皇帝はしばしその場に立ち尽くしていた。




 **





 日本には豊富な地下資源があり、その国土面積に比して他国との力関係は大きいものだった。開かれた国で、東京にはブリタニア人の一大居留地が形成されている。教育の中核となるのはアッシュフォード家の経営する私立アッシュフォード学園だ。
「ルルーシュたちが世話になっているのはアッシュフォードだったな」
「そうよ。まずご挨拶に行かないと!」
「うむ」
 皇宮には劣るが、十分広大な敷地には豊かな緑と水があり、意匠の凝らされた建造物やオブジェの数々は見事なもので、そこは日本でありながらまるでブリタニアであるかのようだった。
 シャルルはゆっくりと視線を巡らしながら歩き、マリアンヌは皇宮にはない花を見つけてはにこにこと楽しそうだ。
「なるほど、留学先の環境として悪くはなさそうだ」
 満足げに頷くシャルルの横でマリアンヌが足を止める。つられて止まったシャルルがマリアンヌの視線を追う。
「ルルーシュ!ナナリー!」
 マリアンヌの呼び声に、六つの瞳が一斉に声の発しどころを探し当てた。
「……母さん…」
 息をのんでいる息子と、面をほころばせた娘に向かって駆け寄った。
「お母さまも日本へいらっしゃったんですか?」
「ええ!私だけじゃなく、ほら、シャルルも」
 ゆっくりと歩み寄ってくる存在感のある姿に、ルルーシュは今度こそ言葉を失った。
「……………どう、して…」
「ブリタニアの名を捨ててきた。わしらはもう“シャルル・ランペルージ”と“マリアンヌ・ランペルージ”。正真正銘、お前たちとは家族ということよ」






上手な家族のつくりかた






「…ところで、この子はだぁれ?」
 マリアンヌの瞳がナナリーと良く似た髪色の少年を見つめる。
「俺たちの新しい家族なんです。な、ロロ?」
「う、うん」
「まあ、すてき!良かったわね、シャルル。これで5人家族の完成!」










(08.12.03//TV)