デジャビュをおぼえた、
「「英雄の日」・・・英雄ゼロが悪逆皇帝を倒し世界に奇跡をもたらした日」 カレンダーの9月28日、祝日に書いてあるものだ。 ただこの日を特別だと思っている人はもうほとんど居ない・・クリスマスやお正月といったこれよりに昔からある物とそう変わらない。 この時代に生きている人々はブリタニアと日本が戦争をしていた事なんて教科書の中の話。 かつて忌み嫌われた「ルルーシュ」や「スザク」という名前も今では当たり前につけられる事もある。 実際にここに居る2人がそうだ。この2人の風貌もかつての「スザク」と「ルルーシュ」そのものだった。 ・・・が教科書や歴史の資料にはこの二人の写真は無い。それは兄と幼馴染の写真などが悪用されるのを嫌がったナナリー・ヴィ・ブリタニアがすべて集めてどこかに保管したからと言われている。 その保管された写真などは今も見つかる事はなく。またあまり探される事もなく・・・その為悪逆皇帝の顔もその騎士であった者の顔も今の時代知る人はいない。 似ているという理由ではなくただ名前が同じこの二人が一緒に居るという理由でルルーシュとスザクのクラスは学校の文化祭で英雄ゼロの劇をやる事になった。 そしてちょうど歴史の授業でブリタニア史をやっていた事もあり教員達の強い後押しがあった。 でも、ただ一人反対したルルーシュ・・別に役が嫌だとかそんな子供染みた理由ではない。 母は黒の歌姫といわれる女優兼歌手。父は映画の吹き替えからアニメまで幅広く活躍している声優という、いわゆる芸能一家。そんな親達はあまり家庭を顧みない。 そして最近ルルーシュの溺愛する妹も親に促されて芸能界デビューをさせられそうであって非常にピリピリとしていたのだ。 そんな二人が親だという事をとても悲観に思っているルルーシュ。主役のような役は出来るだけやりたくなかった。・・・・が幼馴染の「楽しそうだしやってみよう」という言葉で簡単に説得されてしまったのだ。 そして文化祭一週間前の稽古中。 「君の演技力にはホント驚かされるよ・・・やっぱり芸能界入ったら?」 「バカがっ・・・そんな事絶対にないっ。・・・それよりもお前の運動神経にも度肝を抜かされるよ・・・。」 「えー、そうかなぁ・・・本当は3回転半の回し蹴りしなきゃいけないんだけど2回転半しか出来ないんだよ?これって駄目なんじゃないかな・・・」 「それだけ出来れば十分だろう・・・」 「それよりも何で僕「スザク」と「ゼロ」の二役なんだろう・・」 「それはお前しかゼロの役の動きが出来ないからだよ・・・それに「スザク」は途中で戦死しているから最後の方出番なくなるだろ・・・。」 劇の練習の休憩時間にお互いの芝居について話すスザクとルルーシュ・・・台本の読み合わせをしながら話している二人。 この劇の大半は歴史に添って作られているが、所詮は教科書の中の出来事。劇として面白みが出るように演出もはいっている。 マシンガンで打たれているのにそれをよけるなんて事本当だったら出来るわけ無いしこの劇の目玉の約2メートルの段を一気に飛び上がると言うありえないものも・・・。 そんな台本をぱらぱらと二人で読む・・・そんないつもと変わらない日・・・。 そして今日のリハーサルはゼロが悪逆皇帝ルルーシュを殺め、英雄が誕生する場面。 リハーサルなので衣装は無し。小道具も無い。簡単に作られた段差があるだけ・・・ 「よーし!始めるぞぉ・・・よぉい、スタート!!」 監督をやっている生徒の声でざわざわとしていた部屋が静まり返る。 「あ・・!あれはっ・・・」 その声と同時に走り出すスザク。兵隊役の生徒をよけつつルルーシュがいる段に昇る・・・ その時だ制服姿のルルーシュが白の賢帝の様な姿に見え驚いたはずの表情は優しい微笑みに変わる・・・そして持っているはずのない剣が手にあり・・・その剣がルルーシュの体を貫く感覚・・・。 「う・・・っ!!」 ルルーシュの呻くような演技で我に返る・・・。 そうすると驚いたのはルルーシュだ。 「!!・・・スザクっ!どうして泣いているんだ?」 いわれて自分の頬に涙が伝っているのに気付くスザク。 「あ・・・あれ?おかしいな・・・泣くシーンじゃないのに・・・うぅっ・・!」 涙が止まらず声にならなくなる。 「ごめんちょっと顔洗ってくる・・・」 そういい教室を出るスザク。 屋上に駆け上がり少し重みのある扉を開けると夏と比べ随分涼しくなった午後の風が頬に当たり涙の跡を乾かす。 「(さっきのはなんだったんだろう・・・なんか同じことが前にもあったようなあの感覚・・・。)」 デジャビュ・・・って言うんだっけ?などと考えつつ屋上から下にある校庭を見つめる。 「はぁっ・・やっぱり、ここにいたか・・・!こんなところに水道は無いぞ。」 そう言われて振り向くとルルーシュがいた。 「ごめんね・・・途中で飛び出してきて・・・」 そう苦笑いをするスザクはどこか悲しそうだったそんなスザクを見て微笑み言う。 「お前は・・優しいんだな・・・」 「え・・・なんで?」 いきなりの言葉にスザクが驚く 「いや・・・何となくだ」 そんな曖昧な答えが返されたがなぜかとても心地のいい言葉だった。 でも優しいというならルルーシュのほうが優しいとスザクは思った。 昔からそうだ。自分と彼の妹に対しては特にそうだがルルーシュは本当にいつも優しい・・・。 こうして自分が訳もわからず泣いただけだって言うのに必死で探したんだろう体力の無い彼が息も上がり汗を滲ませながらここに心配して来てくれたんだ。 そんな姿になぜか胸がざわつき・・・抱きしめたいような衝動が起こる。 そんな衝動を抑えるように出てきた言葉に自分でも驚いた 「ねぇ・・ルルーシュ――好き、だよ。」 幼馴染にこんな告白するように言うのは初めてだ。それなのに妙に口になじむ 「え・・・あ・・俺も、スザクが・・好き・・・・だ」 少しためらいはずかしそうに言うルルーシュ ルルーシュからもこうゆう風に言われたのは初めてだ。なのに妙に聞き覚えがある。 「なんだろ・・・前にもこんな話したっけ?」 「いや・・・無い・・と、思う・・。」 スザクの質問にルルーシュが曖昧に答える 「僕さっきからデジャビュばっかりだ・・・」 ははっと軽く笑うスザクにルルーシュが驚きそして笑顔で言う 「俺もだ」 二人はお互いに見つめあいながら笑いあう こんな事二人にとっては当たり前だったのに今の二人は笑いながらなんだかとても懐かしく・・・そして涙が出るほど嬉しかった・・・。まるで長い事離れ離れになっていた様な・・やっと会えたような錯覚の中で・・・。 どこかで聞いた様な話・・・敵同士だった2人は約束しました・・・平和な世界。 人々が優しい気持ちで暮らしている世界できっとまた会いましょう・・・その時は君の(お前の)罪も僕の(俺の)罪も全部許します。だから・・・ その出会える時・・・再会してお互いを思い出すことが無くても必ず笑顔で笑いあおう・・・心から。 そんなどこかで聞いた事のあるような願い・・・二人は口に出すことなく思い出す・・・。 この二人が感じたのは錯覚だったのかそれとも・・・そんなデジャビュを二人は憶えた。 あとがき ここまで読んでいただきありがとうございました!そしてこんな素敵な企画に参加でき、本当に嬉しいです!! 満足していただけるような物ではなかったかもしれませんが少しでも幸せな二人を感じていただけていたら幸いです・・・。 2009.09.15 柊 歌乃 |